財団案内 創立者のことば
資源小国の我が国が、戦後の焦土化した国土から起ち上がり、二度にわたるオイルショックの試練も克服し、今日では世界の国民総生産の1割を占める経済大国に成長を遂げたのは、国民の教育水準の高さに裏付けられた勤勉努力と、たゆまない技術革新、国際的にはガットを中心とした自由貿易体制の賜であります。
しかしながら、現在の日本の置かれている環境は、深刻な貿易摩擦に代表される輸出依存型経済の修正を厳しく迫られており、自由貿易体制維持のため、一層の市場開放と後進国援助を強く求められております。
また、産業の高度化の中心であった技術革新も、外資導入をテコとした応用技術が中心であり、基礎研究の遅れ、独自開発技術の欠如が指摘され、今後の発展のためにはこれらの修正が急務であります。
我が国は資源小国であり、ほとんどすべての産業用原材料ばかりか、食料すら輸入に頼らざる得ない国柄であります。
したがって、輸入した原料をその高度な生産技術で加工製品化して国内需要を満たすばかりでなく、その一部を世界に輸出し、その代金で我が国が必要とする食料や原材料を購入するという循環で成り立っており、この循環をうまく続けることが我が国の発展にとり不可欠であります。
そのためには世界が平和であり、自由貿易体制が維持されることが前提でありますが、経済的には常に世界のトップレベルの技術に裏づけされた産業水準の維持・発展が必要であります。
すなわち、基礎研究から積み上げた独自技術の開発と、これの産業化への応用が不可欠であります。
また、現在の自由貿易体制の維持は貿易国家としての我が国の最重要課題であり、特にその一員の責務として単なる商品の各国への供給のみでなく、特に発展途上国の資源開発への協力、産業発展のための技術水準の向上への対応が強く要請されます。
ここに設立する財団法人東京応化科学技術振興財団は、かかる時代の要請を踏まえて、科学技術の開発並びに国際研究交流に対する助成等を目的とし、全地球的な科学技術の振興と発展に貢献いたす所存であります。
(昭和62年5月29日 向井繁正)